2021年9月18日土曜日

ゴーン・ガール/デビット・フィンチャー監督



 約7年前にシネコンで観た作品である。どうしても鑑賞したかった訳ではなかったような記憶がある。なんとなく前評判とデビット・フィンチャーだから、という程度の動機で足を運んだのだろうか。


 とはいえ、デビット・フィンチャー監督は「エイリアン3」(シリーズ中の駄作。ただし制作会社側の著しい修正と編集をかけられているためフィンチャー監督自体は自作と認めていない))、「セブン」(陰鬱かつ知的で実に後味の悪い)、「ゲーム」(馬鹿にしたような結果楽しい娯楽作)、「ファイトクラブ」(暴力に魅せられる意味が不明)「ベンジャミン・バトン」(はっきり言って駄作?のような気がした)くらいしか観ていない。

 相当な完璧主義者らしい、ブラピもワンシーンで数十回ダメ出しされてキレかかったこともあるようだ(あくまで噂)。


 フィンチャー作品の印象を一言で言い表せば、感情移入できないことが彼の作品の最大の特徴だと感じている。本作「ゴーン・ガール」はまさに「感情移入しそうでありながら絶対に入り込むことができない」映画である。

 本作でも、ラスト近くで「夫婦とはそうしたもの」、というセリフがあるが、頭ではなんとなく理解できても、しっくりこない、何かシリコンパネルの中のソフトクリームを見て美味しそうと感じることができないことに似たような感覚を覚えるのである。 


 しかし、この映画を観ることは冗長とも思える前段からジェットコースターのように展開していく中段以降まで脳天をぶちのめされるようなショックを受ける体験となること間違いない。ぶちのめされた後、じんわりと胸に苦い後味が広がっていいく。今回Amazon prime Videoでの鑑賞をしたのだが、おそらく二度と見ることはないであろう。


 それにしても、出ている役者の上手いことには感心。演出も多分相当厳しかったのだろうが、よく言われるロザムンド・パイクはほとんど本物のサイコだし、ベン_アフレックは相変わらずアホであるが隠れた弱さを内包する出来損ないの自称作家を素で演じているかのようだ。またキム・ディケンズが情報に流されず冷静に状況分析を行う女性刑事を感情を抑えた素晴らしい演技を披露している。これはフィンチャーの厳しい演出の賜物だけではないであろう。


 しかしフィンチャーはどの作品も繰り返して観たくなる映画ではないものの、次回作が楽しみになる、そんな不快な映像作家である。